配筋検査でもっとも重要な写真の撮り方・コツを解説

目次

配筋検査の写真は、コンクリートによって見えなくなる部分の状態を記録し、後から証明や共有ができるようにするための重要な資料です。本記事では、スムーズかつ正確な検査写真撮影を実現するためのポイントを解説します。

配筋検査の撮影前の準備

撮影する箇所と図面を事前に確認する

配筋検査の基本は、設計図書(設計図や仕様書など)と現場の整合性を確認することです。撮影前に以下の図面を参照し、撮影すべき箇所のリストアップが不可欠となります。

鉄筋の種類・径・本数・間隔・鉄筋の外側からコンクリート表面までの厚さを示す「かぶり厚さ」といった項目は、図面と現場を照合しながら正確に記録します。抜け漏れ防止と作業効率化のため、推奨されているのが「撮影計画書」の作成です。

「いつ:コンクリート打設の前」「誰が:現場責任者」「どこで:基礎」「何を:かぶり厚さ」「なぜ:規定値を満たしているか証明するため」「どのように:スケールを当てて撮影」といった具体的な5W1H(いつ、誰が、どこで、何を、なぜ、どのように)を定めておくことで、効率的な撮影が可能です。

作業員とのタイミング調整をしておく

配筋検査は、コンクリート打設直前の限られた時間で行われます。一度コンクリートを打設すると撮り直しは一切できないため、実施タイミングの調整が重要です。以下の状態が整った段階で撮影を行います。

基礎コンクリートがベース(底盤)と立ち上がりに分かれている場合は、それぞれのタイミングで撮影機会を確保する必要があります。現場では複数の業者が連携して作業を進めているため、関係する作業員と事前にスケジュールを調整することが必須です。調整を怠ると撮影機会を逃し、再施工や確認漏れにつながるリスクがあります。

撮影後の流れ(記録・報告)も
想定する

撮影の最終的な目的は、コンクリート打設後の品質を証明したり、関係者間で情報を共有したりすることです。撮影に入る前に以下のポイントを想定しておきましょう。

最終的なゴールを見据えて計画を立てることが、効率的な作業につながります。

配筋検査に必要な道具や
あるとよい道具

スケール(巻尺)・検査札・マグネットシート

鉄筋のピッチや間隔、かぶり厚さなどを正確に記録する必要があるため、目盛りがはっきり読めるスケールは必須アイテムです。写真に写し込んだ際に、数値が明確に判別できるものを選びましょう。

また、撮影箇所や検査項目を明示する検査札やマグネットシートも欠かせません。これらを使うことで、どの部分を記録したのかが一目で分かり、後からの確認や報告書作成がスムーズになります。写真に残した情報が正しく伝わるよう、視認性を重視して選びましょう。

黒板(手書き/アプリ)や撮影用ボード

黒板は、工事名や撮影日など、写真単体では伝えきれない情報を補足する重要なツールです。選定時には「記載内容の明瞭さ」と「記入作業の効率性」を基準に検討すべきです。

手書きの黒板は、現場の状況に合わせて柔軟に情報を書き込める利点があります。一方、電子小黒板アプリは、あらかじめ情報を登録しておけるため、記入漏れを防ぎ作業の省力化につながります。現場の規模や作業環境に応じて、適切なツールを選択しましょう。

撮影機器(カメラ)の選び方

撮影機器を選定する際は「画質」「手ブレ対策」「データ管理機能」の3点を基準とする必要があります。画質が不十分だと記録としての信頼性が低下することから、解像度の高い機器を選ぶのが基本です。検査時には暗所や狭所での撮影場面もあり、手ブレ補正機能の有無が作業効率を大きく左右します。

加えて、専用アプリや配筋検査システムと連携できる機器であれば、黒板情報の自動表示やクラウド保存により報告書作成の負担を軽減できます。検査精度と業務効率の両立を意識して選定することが大切です。

配筋検査の撮影例

主な撮影ポイントと目的、撮影時の注意点を紹介します。コンクリート打設後に、隠れてしまう構造部の状態を視覚的に証明するための撮影例です。

スラブ配筋の全景写真

スラブ配筋の事例画像
引用元:西武ハウス公式HP
(https://seibuhouse.co.jp/report/muromi/第13回報告書 14階躯体(15階床) 配筋工事/配筋/)

建物や構造物の床を支えるコンクリート板、スラブに配置された鉄筋の状況を撮影します。これは、設計図に沿った鉄筋の全体配置(種類・本数・間隔)を記録し、施工品質の妥当性を証明することが目的です。スラブ全体の状況を記録するために、広角で高い位置から撮影しましょう。

後からでも鉄筋の配置が正確に確認できるよう、構図を工夫することは非常に大切です。工事情報を記載した黒板も一緒に写し込むことで、写真の信頼性が格段に向上します。

柱主筋と帯筋の詳細写真

柱主筋と帯筋の事例画像
引用元:東京建物Brillia公式HP
(https://brillia.jp/subscriber/tmc-meguro/rebar.html)

建物の安全性を支える柱の配筋状態をクローズアップして記録します。構造計算の基礎となる、主筋の径・本数、帯筋の間隔が設計図通りであることを証明するのが目的です。

かぶり厚さの確認状況

かぶり厚さの事例画像
引用元:松美建設公式HP
(https://www.mwh.co.jp/co_diary/a903a4dcd762e06a02d721e9.html)

かぶり厚さが規定値を満たしているか、写真で確認することが目的です。かぶり厚さが不足すると、鉄筋の耐久性や耐火性能が低下し、長期的には構造全体の性能にも悪影響を及ぼす恐れがあります。是正の必要があるかどうかを判断できるよう、確実に記録しておくことが重要です。

スケールを写し込んだ撮影例

スケールの事例画像
引用元:建設ITワールド
(https://ken-it.world/success/2022/05/automatic-rebar-check.html)

鉄筋の配置間隔や長さなどの寸法を、現場で正確に施工されていることの証明が目的です。配筋検査では鉄筋の「配置」、「ピッチ(間隔)」、「定着の長さ」、「かぶり厚さ」、「径(太さ)」など、多くの項目がミリ単位で細かくチェックされるため、スケールを写し込ませることが重要です。

配筋検査の撮影時のポイント

施工後のトラブルを防ぎ、報告書の信頼性を高めるためには、以下の4つのポイントを押さえて撮影する必要があります。

スケール・黒板・撮影部位を写真に写し込む

配筋検査の写真を撮る際は、「寸法」「情報」「位置」の3つの要素を同時に写し込むことが、後からの図面照合や寸法確認をスムーズに行うための重要なポイントです。3つの要素が欠けていると、再撮影が必要になるケースがあります。

具体的には、鉄筋の間隔やかぶり厚さを証明するスケール、工事名や撮影日を記録する黒板、通り芯(建物の位置を決める基準線)を一緒に撮影。スケール・黒板・通り芯を同一フレームに収めることで、客観性と信頼性を確保し、無駄な手戻りを防げます。

ピントと明るさに注意する

品質を可視化する証拠資料として、画像が鮮明であることは絶対条件です。鉄筋の交差部や結束状態にピントを合わせましょう。ピンボケの写真は、証拠として認められない可能性があります。

暗い場所ではスマートフォンのライトや照明機材を活用し、鉄筋が影にならないよう、明るくクリアな写真の撮影が重要です。

全景とクローズアップの
両方を撮る

全体の配置状況と重要なポイントの詳細の両方を記録することで、網羅的な証明が可能です。スラブや梁など、構造物全体の配筋状況を撮影し、後工程で確認できなくなる部位の重要な記録とします。

鉄筋の結束部・定着長さ・かぶり厚さなどは、至近距離の撮影がポイント。重要な箇所は複数の角度から撮影することで、確認精度が高まります。

図面と照合しやすいように
整理して撮る

撮影した写真が図面と照合しやすく、報告書や監査資料として活用できるよう、撮影の計画性とデータ管理の工夫が必要です。

撮影した画像は、配筋検査システムやアプリを活用することで、自動的に分類され、黒板情報とも紐付けて管理できます。一方で、手動で管理する場合は、フォルダ分けやファイル名のルールを徹底すれば、後から探しやすくなります。さらに効率を重視するなら、AI機能を備えたシステムの導入が効果的です。AIが画像を自動解析するため、複雑な構造でも記録と確認の精度向上が実現できます。

配筋検査システムなら撮影も記録も手間なくスムーズ

最近では、配筋検査システムを活用することで、撮影準備の手間を大幅に軽減することが可能になっています。 スマートフォンやタブレットで撮影するだけで、寸法を自動で解析する機能や、写真データをそのまま図面と照合・保存できる機能が搭載されているため、現場での「撮り方」に悩む時間を最小限にしつつ、正確な記録を効率的に残すことができます。

本サイトでは、14社の配筋検査システムを調査し、おすすめの配筋検査システム3選をご紹介しています。検査品質の向上や効率化を目指す企業の方は、ぜひ参考にしてください。

※2025年6月19日編集チーム調べ:「配筋検査システム」とGoogleで検索をして表示された配筋検査システムを提供する会社を選定

配筋検査の記録保管方法

配筋検査の写真は、完成後には確認できない構造内部の品質を証明する、代替不可能な記録です。データの適切な保管・管理は、品質保証とリスク管理の根幹をなします。

撮影日・場所・図面番号を記録する

配筋検査の写真は、コンクリート打設後に隠れる部分の品質を証明する大切な記録です。撮影日時や場所、検査項目を正確に残すには電子小黒板アプリが有効。情報を自動付加でき記録漏れを防ぎます。

撮影後は「日付_箇所_工種」といったルールでファイル名やフォルダを整理すると、必要な写真を迅速に探せるようになり、品質保証や説明責任にも役立ちます。

撮影写真は報告書と一緒に保存

撮影した写真は、検査報告書やチェックリストと必ずセットで保存することが原則です。写真と関連書類を紐づけることで、検査の経緯と結果を一体的に把握でき、説明責任を果たしやすくなります。施工管理アプリでは、写真を選択するだけで報告書を自動作成する機能もあり、記録の一元化と業務効率化を同時に実現できます。

クラウドや社内サーバで
共有・バックアップ

撮影したデータは、必ずクラウドストレージや社内サーバで一元管理しましょう。関係者間でのリアルタイムな情報共有が可能になるだけでなく、データの紛失や破損、誤った上書きといったヒューマンエラーのリスクを大幅に軽減できます。定期的なバックアップ体制を構築することも、重要なリスクマネジメントです。

【現場別】配筋検査システム
おすすめ3選

配筋検査とひと口に言っても、その方法は現場によって異なります。このサイトでは、商業施設・トンネル・橋梁といった、規模や構造に特徴がある現場別に、14社の製品からおすすめの配筋検査システム3選をご紹介します。

※2025年6月19日編集チーム調べ:「配筋検査システム」とGoogleで検索をして表示された配筋検査システムを提供する会社を選定

商業施設向け
ゼネコン21社※1
共同開発された建築対応型

CONSAIT Pro配筋検査

プライム ライフ テクノロジーズ公式HP
引用元:プライム ライフ テクノロジーズ公式HP
(https://www.consait.com/)
商業施設向けの理由

従来の検知技術では困難な奥行きのある配筋をAIカメラが正確に認識。精度の高い検査が必要な商業施設でも、熟練度に依存せずに検査ができます。

鉄筋量が多い大型・多層階の施設でもARスケールで楽に検査写真を撮影可能。画像検索機能や進捗確認の見やすさによって、探す手間を改善し作業時間を約4~5割削減※2します。

トンネル向け
湾曲面も
検出率約100%※3を見込める

Field Bar FB-200

三菱電機エンジニアリング公式HP
引用元:三菱電機エンジニアリング公式HP
(https://www.mee.co.jp/kaisyaan/press/prs250306.html)
トンネル向けの理由

湾曲構造のトンネルでも鉄筋の本数や位置を正確に把握。誤差が出やすい曲面も「湾曲計測モード」で容易に測定が可能で、位置調整の手間が省けます。

トンネル内の天井が低い現場でも、検査機が軽量で分離構造のため、取り回しがスムーズ。足場の限られた狭所でも位置調整などに時間を取られず、効率的に検査ができます。

橋梁向け
橋梁工事向けに
開発された

自動配筋検査AIシステム

JFEエンジニアリング公式HP
引用元:JFEエンジニアリング公式HP
(https://www.jfe-eng.co.jp/dx/case-2.html)
橋梁向けの理由

ドローンを撮影に活用することで、高所作業を伴う橋梁検査の作業負担を大幅に軽減。手作業中心の検査に比べて、約75%※4の省力化を実現したという事例もあります。

これまでの測定方法では難しいPC橋や鋼床版の複合構造にも、AIを用いた画像解析で対応可能。橋長全体の検査・記録が効率的になり、検査品質を向上させます。

※1 2025年9月時点
参照元:プライム ライフ テクノロジーズ公式HP(https://www.consait.com/
共同開発に参画したゼネコン21社:青木あすなろ建設株式会社/ 株式会社淺沼組/ 株式会社安藤・間株式会社奥村組/ 北野建設株式会社/株式会社熊谷組/ 五洋建設株式会社/ 佐藤工業株式会社/ 大末建設株式会社/ 髙松建設株式会社/ 鉄建建設株式会社/ 東急建設株式会社/ 戸田建設株式会社/ 飛島建設株式会社/ 西松建設株式会社/ 日本国土開発株式会社/ 株式会社長谷工コーポレーション/ 株式会社ピーエス三菱/ 株式会社松村組/ 村本建設株式会社/ 矢作建設工業株式会社
※2参照元:プライム ライフ テクノロジーズ公式HP(https://www.youtube.com/watch?v=ryLovLWmvz0&t=7s
※3参照元:三菱電機エンジニアリング公式HP(https://www.mee.co.jp/kaisyaan/press/prs250306.html
ただし過検出を含み、撮影条件等によります。
※4参照元:JFEエンジニアリング公式HP(https://www.jfe-eng.co.jp/news/2020/20200909.html

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