配筋検査の要領を分かりやすく解説(国交省・JIO・JSCA)

目次

建築物の構造的信頼性を確保するうえで、配筋検査は欠かせない工程です。鉄筋コンクリート構造では、コンクリート打設前に鉄筋の配置状況を正確に確認することにより、耐震性や耐久性の低下を未然に防ぎます。

本記事では、配筋検査の基本的な概要から実施要領、具体的なチェック項目、よくある指摘と是正対応の流れまでを解説。

施工者・設計者・第三者機関など、関係者それぞれの立場で理解すべきポイントも網羅していますので、配筋検査の要領を把握したい方はご参照ください。

配筋検査の基本と重要性

配筋検査とは何か

コンクリートを打設する前に、鉄筋が設計図面どおりに正しく配置されているかを確認する工程が配筋検査です。建築物の構造安全性に直結する重要な基礎検査のひとつであり、主に鉄筋の位置・本数・種類・固定状況などを入念に確認します。

施工者だけでなく、専門工事業者や品質管理担当者、工事監理者、行政機関や指定確認検査機関など、複数の立場が関与して検査を実施。それぞれが設計図面と照合しながら、見落としなくチェックすることが求められます。

なぜ配筋検査が重要なのか

コンクリート打設前に不備を検知できる

コンクリートを一度打設してしまうと、内部の鉄筋がどう配置されているか目視で確認することはできません。だからこそ、コンクリートを打つ前の段階で不備がないか確認する必要があります。写真や記録文書として検査状況を残すことは、制度・契約・監理要領によって求められる(義務となる場合がある)ため、事前に要件を確認のうえ適切に記録しましょう。

設計との相違箇所を検知できる

設計と異なる配筋状態で施工されると、使用中や地震時に建物の構造に問題が生じる可能性があります。たとえば配筋ピッチの過大、定着(埋込み)長さの不足、かぶり厚さの不足などは、耐震性や耐久性の低下リスクを高めることにつながります。こうしたリスクを抑えるためには、打設前の配筋検査で早期に把握し是正することが重要です。

補修コストを抑えられる

配筋ミスは、施工後に発覚すると大規模なやり直しが必要になる場合があります。アンカーボルトの設置忘れや、かぶり厚さの不足などは、コンクリート打設後では修復が非常に困難です。大規模な手戻りや修復困難な状況を避けるためには、配筋検査の段階で不具合を見つけておくことが欠かせません。

信頼性や工期への
影響を避けられる

検査不足によって柱や梁の配筋に問題が見つかった場合、コンクリートの部分的な削り取りなどの工数が増加し、発注者・設計者とのトラブルに発展するおそれがあります。工期遅延や信頼低下を避けるには、設計図との照合を徹底し、問題を早期に発見する検査力を持つことが重要です。

ヒューマンエラーのリスクも
避けたいなら配筋検査システムの
導入がおすすめ

配筋検査の重要性や注意点を理解すると同時に、実際の現場では「正確さ」と「効率性」を両立させることが大きな課題となります。従来の手作業だけでは記録や確認に多くの時間と労力がかかり、ヒューマンエラーのリスクも避けられません。

こうした課題を解決する手段として注目されているのが「配筋検査システム」です。写真の自動解析やデータの一元管理などを通じて、検査の品質向上と効率化を同時に実現できます。

本サイトでは、14社の配筋システムを調査し、おすすめの配筋検査システム3選をご紹介しています。検査品質の向上や効率化を目指す企業の方は、ぜひ参考にしてください。

※2025年6月19日編集チーム調べ:「配筋検査システム」とGoogleで検索をして表示された配筋検査システムを提供する会社を選定

配筋検査の
実施タイミングと流れ

コンクリート打設前に実施されることが一般的です。基礎コンクリートが底盤(ベース)と立ち上がりの2回に分けて打設される場合には、2回に分けて配筋検査を行うケースも。この検査は、配筋作業がすべて完了していることが前提のため、「コンクリート打設の直前、かつ配筋完了直後」という慎重なタイミングで配筋検査が設定されています。

検査の一連の流れ
(準備~是正確認)

配筋検査は、複数の関係者によって段階的に実施されます。

1.事前準備

構造設計者が施工者や、専門業者に設計意図や注意点を共有する説明会が推奨されており、施工計画書の作成や各種図面・仕様書の準備も不可欠。チェックリストや検査道具の用意、是正が必要になった場合にも備えます。

2.検査の実施と記録

鉄筋の配置・ピッチ・かぶり厚さ・埋込み長さ・継手位置など、図面通りに施工されているかを主に目視・計測・書類でチェック。施工後に確認ができなくなるため、各検査項目は写真と書面で記録を残す必要があります。撮影時には工事黒板の情報も明記し、全体と細部の両方を撮影することが求められるので注意しましょう。

3.判定と是正対応

検査の結果は「適合」「不適合」「保留」「該当なし」のいずれかで判定されます。不適合とされた場合は速やかな是正が求められるため、スペーサーの追加やかぶり厚さ不足の補正など、判定結果に応じた具体的な措置を行いましょう。

4.是正確認と再検査

是正作業が完了した後、再検査を実施し、修正が適切に行われたか確認します。非破壊試験では、再度測定を行いわずかでも不良があれば、不合格と判定されることもあります。是正内容は必ず報告書に記録し、日本住宅保証検査機構などの機関には「再検査適合」となった最終書類を提出しましょう。

配筋検査でチェックされる
具体的な項目

鉄筋の本数・径・間隔

鉄筋が設計図に沿って正確に配置されているかを確認します。「本数」「径(太さ)」「間隔」の3点は、建物の耐震性や強度を左右する重要項目です。

鉄筋の本数は、部位ごとに過不足なく配置されているか、間隔(ピッチ)は設計値と比べて過不足がないかを定規やスケールで実測し、誤差が許容範囲内かチェックしていきます。

定着・継手・補強筋のチェック

定着、継手、補強筋は、鉄筋同士のつなぎや端部の処理に関わり、建物の耐震性を確保するための重要な検査項目です。現場では次の点を確認します。

かぶり厚さとスペーサーの確認

鉄筋の「かぶり厚さ」は、鉄筋の外周からコンクリートの外面までの距離を指します。建築基準法施行令第79条によって最低値が定められており、不足すると鉄筋が早期に腐食し、建物の耐久性や耐震性能が低下するおそれがあります。

かぶり厚さを確保するために重要なのが「スペーサー(通称:サイコロ)」です。鉄筋と型枠の距離を保つための部材であり、検査では材質が適切か設置間隔が図面通りか断熱材などに埋もれていないか確認しましょう。

配筋検査でよくある指摘

配筋検査において、よくある指摘を紹介します。指摘内容をもとに、気を付けるポイントとしておさえましょう。

かぶり厚さ不足とスペーサー不良

鉄筋の表面からコンクリートまでの距離(かぶり厚さ)が不足すると、鉄筋の腐食やコンクリートの剥離を招き、建物の耐久性を低下させます。スペーサーが正しい位置にない、断熱材にめり込んでいる、数量が不足しているといったケースも典型的な指摘事項です。

継手・定着・補強筋の不備

鉄筋の重ね部分(定着長さ)が基準未満の場合、地震時に破断のリスクがあります。継手の位置や長さ不足も構造性能に悪影響を及ぼすため、応力の小さい位置で所定長さを確保することが原則です。さらに、開口部には必ず補強筋を設ける必要があり、不足すると亀裂や強度不足につながります。

鉄筋の本数・径・ピッチの不一致

設計図と異なる本数や径の鉄筋は、過不足にかかわらず指摘対象です。ピッチ(間隔)のズレも注意点で、一般的には±10mmを超えると是正対象となります。見落としやすいため、目視とスケールによる測定を組み合わせて厳密に確認が行われます。

アンカーボルト・金物の未施工やずれ

基礎と柱をつなぐホールダウン金物やアンカーボルトは、耐震性能を確保する重要部材です。未施工や位置ずれ、曲がりや本数不足が見つかると重大な指摘となります。これらは配筋と同時に確認されることが多く、検査の重点項目のひとつです。

配筋検査の指摘への
是正対応

是正方法

配筋検査における是正方法は、施工の品質確保と構造物の安全性を担保するうえで欠かせないプロセス。検査時に発見された不具合を放置せず、その場で迅速に修正する体制が求められます。

不具合発見時の即時対応が鍵

配筋検査で不具合が確認された場合、基本的にはコンクリート打設前の早急な修正と記録が重要です。現場で発見された不具合に対し、その場での是正が可能であれば、検査時間内に手直しを行い問題の拡大を防ぐことができます。

スペーサーの追加による是正

鉄筋のかぶり厚さが不足しているようなケースでは、スペーサーの追加が有効です。鉄筋がたわんでしまい、所定のかぶり厚さを確保できない場合には、スペーサーの間隔を適切に調整しましょう。厚さを均一に保つことで是正ができます。

打設後の是正は最終手段

コンクリート打設後に配筋ミスが発覚すると、コンクリートの一部除去が必要になるケースがあります。構造物に影響を与えるだけでなく、工期の遅延やコスト増大にもつながりかねません。そのため、是正は打設前の段階で完了させることが原則です。

是正記録と報告の徹底

是正を行った際は、対応内容を写真や書面で記録し、報告書としてまとめることが不可欠です。施工管理システムなどを活用し、是正箇所をリアルタイムで共有する体制を整えることで、後のトラブルを回避しやすくなります。是正報告は、第三者検査機関や発注者への説明責任を果たすうえでも重要な手続きであると押さえておきましょう。

配筋検査における
再検査の流れ

配筋検査で「不適合」と判定された場合は、是正工事を行ったうえで再検査が必要です。基本的な流れは以下の通りです。

  1. 不適合の確認: どの部分が基準を満たしていないかを記録し、施工者へ伝えます。
  2. 是正作業の実施: 指摘箇所を修正し、必要に応じて再度チェック可能な状態にします。
  3. 再検査の実施: 工事監理者や検査機関が現場で確認し、改善が図面どおりかを判定します。
  4. 検査記録の作成: 是正内容と再検査の結果をまとめ、正式な報告書として提出します。

再検査の結果、すべての基準に適合すれば「再検査適合」となり、次の工程に進むことができます。

配筋検査を確実に
行うための工夫

検査前にセルフチェック体制を整える

配筋検査を正しく進めるためには、事前のセルフチェック体制を整えることが重要です。チェックリストを活用して必要書類や計測器具をそろえ、図面と施工内容を照合するポイント(鉄筋の間隔・かぶり厚さ・定着長さ・径など)をあらかじめ確認しておきましょう。

さらに、写真撮影のルールを統一しておけば、証拠が整理され後の確認もスムーズになります。仕組み化されたセルフチェック体制があることで、検査の精度が高まり、現場全体を安心して進められるでしょう。

各立場(現場・設計・第三者)の
役割を理解する

配筋検査では、現場・設計・第三者がそれぞれ決まった役割を担っています。現場は鉄筋の位置や数を記録し、設計は「どの基準で判断するか」を明示。第三者は記録と図面を突き合わせて確認します。

誰がどこで責任を持つのかを理解しておけば、チェックの重複や漏れを防げるだけでなく、自分の立場でやるべきことに集中できます。

※参照元:
【PDF】国土交通省大臣官房技術調査課(https://www.mlit.go.jp/common/001260872.pdf
【PDF】日本建築構造技術者協会東北支部(http://www.fksk.jp/uploads/pdf/20190605-19_kyoutsu.pdf
KENTEM(https://kentem.jp/blog/construction-reinforcement-inspection/
【PDF】全国住宅産業協会(https://www.zenjukyo.jp/archives/member/data/130426manual.pdf

【現場別】配筋検査システム
おすすめ3選

配筋検査とひと口に言っても、その方法は現場によって異なります。このサイトでは、商業施設・トンネル・橋梁といった、規模や構造に特徴がある現場別に、14社の製品からおすすめの配筋検査システム3選をご紹介します。

※2025年6月19日編集チーム調べ:「配筋検査システム」とGoogleで検索をして表示された配筋検査システムを提供する会社を選定

商業施設向け
ゼネコン21社※1
共同開発された建築対応型

CONSAIT Pro配筋検査

プライム ライフ テクノロジーズ公式HP
引用元:プライム ライフ テクノロジーズ公式HP
(https://www.consait.com/)
商業施設向けの理由

従来の検知技術では困難な奥行きのある配筋をAIカメラが正確に認識。精度の高い検査が必要な商業施設でも、熟練度に依存せずに検査ができます。

鉄筋量が多い大型・多層階の施設でもARスケールで楽に検査写真を撮影可能。画像検索機能や進捗確認の見やすさによって、探す手間を改善し作業時間を約4~5割削減※2します。

トンネル向け
湾曲面も
検出率約100%※3を見込める

Field Bar FB-200

三菱電機エンジニアリング公式HP
引用元:三菱電機エンジニアリング公式HP
(https://www.mee.co.jp/kaisyaan/press/prs250306.html)
トンネル向けの理由

湾曲構造のトンネルでも鉄筋の本数や位置を正確に把握。誤差が出やすい曲面も「湾曲計測モード」で容易に測定が可能で、位置調整の手間が省けます。

トンネル内の天井が低い現場でも、検査機が軽量で分離構造のため、取り回しがスムーズ。足場の限られた狭所でも位置調整などに時間を取られず、効率的に検査ができます。

橋梁向け
橋梁工事向けに
開発された

自動配筋検査AIシステム

JFEエンジニアリング公式HP
引用元:JFEエンジニアリング公式HP
(https://www.jfe-eng.co.jp/dx/case-2.html)
橋梁向けの理由

ドローンを撮影に活用することで、高所作業を伴う橋梁検査の作業負担を大幅に軽減。手作業中心の検査に比べて、約75%※4の省力化を実現したという事例もあります。

これまでの測定方法では難しいPC橋や鋼床版の複合構造にも、AIを用いた画像解析で対応可能。橋長全体の検査・記録が効率的になり、検査品質を向上させます。

※1 2025年9月時点
参照元:プライム ライフ テクノロジーズ公式HP(https://www.consait.com/
共同開発に参画したゼネコン21社:青木あすなろ建設株式会社/ 株式会社淺沼組/ 株式会社安藤・間株式会社奥村組/ 北野建設株式会社/株式会社熊谷組/ 五洋建設株式会社/ 佐藤工業株式会社/ 大末建設株式会社/ 髙松建設株式会社/ 鉄建建設株式会社/ 東急建設株式会社/ 戸田建設株式会社/ 飛島建設株式会社/ 西松建設株式会社/ 日本国土開発株式会社/ 株式会社長谷工コーポレーション/ 株式会社ピーエス三菱/ 株式会社松村組/ 村本建設株式会社/ 矢作建設工業株式会社
※2参照元:プライム ライフ テクノロジーズ公式HP(https://www.youtube.com/watch?v=ryLovLWmvz0&t=7s
※3参照元:三菱電機エンジニアリング公式HP(https://www.mee.co.jp/kaisyaan/press/prs250306.html
ただし過検出を含み、撮影条件等によります。
※4参照元:JFEエンジニアリング公式HP(https://www.jfe-eng.co.jp/news/2020/20200909.html

配筋検査システムおすすめ3