鉄筋工事は、建物の骨組みを形づくる重要な工程です。その品質を確保するために行われるのが「配筋検査」。一度きりで終わるものではなく、専門業者・施工業者・工事監理者・第三者機関と、それぞれの立場から段階的にチェックが重ねられる仕組みとなっています。
本記事では、配筋検査がどのような流れで進むのか、各ステップの役割と目的を解説します。
専門工事業者が最初に行う自主検査は、施工精度を自ら確認し品質を守るための重要な工程です。図面通りに配筋されているか、鉄筋の本数や径などを重点的にチェック。不具合を早期に是正することで、手戻りの防止や工期遅延を防ぎます。
施工業者が専門工事業者の施工品質を管理し、設計図書との整合性を確認します。建物の構造安全性に直結する鉄筋工事は、一人ではなく複数人で確認を行うことが一般的。施工業者による確認精度は、建築物全体の信頼性を大きく左右します。
工事監理者は、建築主の代理人として、設計図書通りに工事が行われているかを中立的な立場から厳しくチェックします。施工業者や専門工事業者の検査だけでは見落とされがちなミスを防ぎ、建物の構造安全性と品質を確保するための重要な工程です。建築基準法に基づく審査機関の検査とは異なり、建築主の利益を守るためのものになります。
工事監理者による検査の後、建築確認申請で定められた「特定工程」に該当する場合、建築確認検査機関などの第三者機関による配筋検査が実施されます。建築基準法に基づいて、鉄筋工事が法的な基準を満たしているかを客観的に確認する義務的なものです。配筋検査に合格しなければ、次の工程であるコンクリート打設に進むことはできません。
工事監理者や施工業者は、この特定工程検査の合格を目指し、徹底した品質管理を行う必要があります。最終的な合否を判断するのはこの第三者機関であり、その役割は工事全体の信頼性を保証することにあります。
設計図書と照合し、指定された本数・太さ・間隔が正しく施工されているかを確認するのが基本です。正確な配筋は耐震性や荷重支持力を確保する上で不可欠であり、設計図書通りであっても、ピッチのずれや曲がりがあると強度不足を招く恐れがあります。測定器や目視を併用し、念入りに確認しましょう。
かぶり厚さ(鉄筋表面からコンクリート外面までの最短距離)が不足すると、鉄筋が外気や水分にさらされます。さらされた鉄筋は腐食を起こしやすく、コンクリートのひび割れや構造耐力の低下を招く原因に。設計図書上は問題なくても、スペーサーブロックのずれや施工誤差で不足が生じやすいため、特に注意が必要です。検査では実測と目視を組み合わせて確認し、確実に厚さを確保することが建物の耐久性を長期にわたって守るポイントになります。
アンカーボルトやホールダウン金物は、地震による建物の倒壊を防ぐために非常に重要です。適切な配置でなければ、建物全体の安全性が損なわれる恐れがあります。コンクリート打設後では補修が難しく、手戻りやコスト増加の原因になる場合も。設計と現場とのズレ、工期優先による省略などを未然に防ぐためにも、確実な検査が求められます。
鉄筋は1本で施工できないため、複数の鉄筋を重ねて接続する継手(つぎて)を設け、他の構造体へしっかりと組み込み固定する定着(ていちゃく)が必要です。鉄筋の重なり幅が不十分だと、地震や圧力による引張力が加わった際に耐えられず、構造的な破断を招く可能性があります。
継手や定着の不足は目視では分かりにくい部分もあるため、図面・仕様書との丁寧な照合が求められます。
配筋検査は、国交省や日本住宅保証検査機構(JIO)、日本建築構造技術者協会(JSCA)などが定める指針に基づいて実施されます。これらの指針が求めるのは、コンクリート打設前の鉄筋の施工状況を、設計図書と照らし合わせて確実に確認すること。
具体的には、鉄筋の位置・本数・間隔・かぶり厚さなどを細かくチェックし、その結果を写真や記録として残すことが義務付けられています。こうした取り組みによって、品質が客観的に証明され、構造物の安全性を確保する体制が整うのです。
配筋検査は専門工事業者の自主検査に始まり、施工業者、工事監理者、さらに必要に応じて第三者機関が関与します。それぞれの立場で検査のタイミングが異なる点が特徴です。具体的な流れや役割分担については次の記事で解説しています。
配筋検査を適切に実施するためには、測定・記録・確認に必要な専用道具の活用が欠かせません。様々な道具がありますが、大きく3つに分類されます。
目的に合わせて必要な道具を準備しましょう。
配筋検査における写真撮影は、構造内部の施工状況を客観的に証明する重要な工程です。撮影前には設計図書との整合性を確認し、撮影箇所の洗い出しや計画書の作成を通じて、抜け漏れのない準備が求められます。
報告書作成および記録は、建築物の構造的安全性と品質を長期的に確保するために不可欠な業務です。コンクリート打設後には鉄筋が視認できなくなるため、検査時点での正確な記録と報告が求められます。
報告書の作成・記録方法を体系的に整えることは、施工の透明性を高めるだけでなく、将来的な構造トラブルを未然に防ぐ体制づくりにもつながります。
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従来の検知技術では困難な奥行きのある配筋をAIカメラが正確に認識。精度の高い検査が必要な商業施設でも、熟練度に依存せずに検査ができます。
鉄筋量が多い大型・多層階の施設でもARスケールで楽に検査写真を撮影可能。画像検索機能や進捗確認の見やすさによって、探す手間を改善し作業時間を約4~5割削減※2します。

湾曲構造のトンネルでも鉄筋の本数や位置を正確に把握。誤差が出やすい曲面も「湾曲計測モード」で容易に測定が可能で、位置調整の手間が省けます。
トンネル内の天井が低い現場でも、検査機が軽量で分離構造のため、取り回しがスムーズ。足場の限られた狭所でも位置調整などに時間を取られず、効率的に検査ができます。

ドローンを撮影に活用することで、高所作業を伴う橋梁検査の作業負担を大幅に軽減。手作業中心の検査に比べて、約75%※4の省力化を実現したという事例もあります。
これまでの測定方法では難しいPC橋や鋼床版の複合構造にも、AIを用いた画像解析で対応可能。橋長全体の検査・記録が効率的になり、検査品質を向上させます。
※1 2025年9月時点
参照元:プライム ライフ テクノロジーズ公式HP(https://www.consait.com/)
共同開発に参画したゼネコン21社:青木あすなろ建設株式会社/ 株式会社淺沼組/ 株式会社安藤・間株式会社奥村組/ 北野建設株式会社/株式会社熊谷組/ 五洋建設株式会社/ 佐藤工業株式会社/ 大末建設株式会社/ 髙松建設株式会社/ 鉄建建設株式会社/ 東急建設株式会社/ 戸田建設株式会社/ 飛島建設株式会社/ 西松建設株式会社/ 日本国土開発株式会社/ 株式会社長谷工コーポレーション/ 株式会社ピーエス三菱/ 株式会社松村組/ 村本建設株式会社/ 矢作建設工業株式会社
※2参照元:プライム ライフ テクノロジーズ公式HP(https://www.youtube.com/watch?v=ryLovLWmvz0&t=7s)
※3参照元:三菱電機エンジニアリング公式HP(https://www.mee.co.jp/kaisyaan/press/prs250306.html)
ただし過検出を含み、撮影条件等によります。
※4参照元:JFEエンジニアリング公式HP(https://www.jfe-eng.co.jp/news/2020/20200909.html)